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 喜田さんが平成22年7月から24年12月までの2年間半、ここに掲載してくださったシリーズを一冊の本にして出版されました。A4版、オールカラー、182ページ、限定本として2千円です。季節感あふれるお料理とその材料、作り方の写真が満載です。

 長きにわたって掲載された内容は、同窓とりわけ後輩達に向けたメッセージで、家庭で知っておいてもらいたい食の基本です。日々の食卓に出せるよう身近な素材を使っての料理法です。 「命は食にあり」は喜田さんのお父上の信念と聞いていますが、それを受け継いだ食に対する喜田さんの思いが第1回から第50回まで一貫して流れていて、読む者をとらえて離さない力となっています。

 しらはぎ会ホームページ「食の伝承」の2年間半が、本となり、手元の見開きに収まっていることは感無量です。このコーナーから本が生まれましたことをお知らせするとともに出版された本をお手に取っていただけたらと思っています。

平成25年10月   しらはぎ会HP担当 二橋とき子

 
第1回 金糸うり   第2回 その1 白うり   〃その2 鮎
第3回 茄子   第4回 松茸   第5回 その1 隠元と胡麻
〃その2 南瓜と小豆   第6回 ぶどう   第7回 鯖
第8回 普茶料理   第9回 さつま芋   第10回 蓮根
第11回 伝統のおせち   第12回 人日節句(じんじつせっく)   第13回 節分
第14回 建国記念の日   第15回 上巳の節句(桃の節句)   第16回 春分の日(春の彼岸)
第17回 お花見   第18回 花祭り(灌仏会)   第19回 端午の節句(こどもの日)
第20回 母の日   第21回 氷室の節句   第22回 父の日
第23回 七夕節句(星まつり)   第24回 祇園祭(祇園さん)   第25回 夏の土用
第26回 お盆   第27回 お月見   第28回 重陽の節句
第29回 体育の日   第30回 秋祭り   第31回 神立ちとえびす講
第32回 七五三   第33回 勤労感謝の日(新嘗祭)   第34回 大晦日からお正月まで
第35回 お正月   ★特別編   第36回 食卓談話「鶴のお話」
第37回 食卓談話「お茶のお話」   第38回 食卓談話「蛤のお話」   第39回 食卓談話「大根と春野菜のお話」
第40回 食卓談話「御馳走のお話」   第41回 食卓談話「節約のお話」   第42回 食卓談話「鶏卵と鶏」のお話」
第43回 食卓談話「旬と桃のお話   第44回 食卓談話「家康の好物のお話   第45回 食卓談話「二宮尊徳翁と澤庵
第46回 食卓談話「味噌汁のお話」   第47回 食卓談話「不老長寿のお話」   第48回 食卓談話「柿のお話」
第49回 食卓談話「酒のお話」   第50回 食卓談話「平常心    
※このコラムは静岡県立浜松北高同窓会女子部「しらはぎ会」のために書かれたものです。作者に無断での転載・転用は固くお断りします。
桜田事變で名髙い井伊掃部頭(いいかもんのかみ)は、自分一人で服(の)むために茶をたてる場合も、必ず作法通りにして、聊(いささ)かも違背するところがなかった。家來の一人が、「一來客の折りは兎(と)も角、御前御一人の時は、あれまで御叮嚀になされずとも宜しからうと存じますが・・・」と言ふと、掃部頭はニッコリとして、「いやいや、左様ではない。自分は如何なる場所、如何なる折でもこれが最後と思って何事をもなして居る。茶をたてる際とて同じことである。どうして粗略なことが出來ようぞ」と、言はれた。
~私の感じること~
☆茶事について

私達が催す茶事も一期一会です。お客様同志が同じメンバーで再び会うことがないかも知れません。お懐石も又、この日の献立で召し上がって頂くことは再びないかも知れません。ですからこの一度限りの機会を最後と思い真心込めたお料理とお茶でお持て成しをします。これらの所作(しょさ)は常日頃の積み重ねですから粗略にすれば、それが身に付き、ふとした折に落ち度となります。人生も又、様々な場面で二度とまみえることのない貴重な出会いと時間です。その時々に与えられた自分の役目をしっかりとこなし、常に何事にも丁寧を心がけ、一生懸命に生きて後、平常心是道となるでしょうか。

 
外露地・内露地
つくばい
 
初座、床と掛軸
釜と炉中
 
懐石指導
初座、懐石を頂く
 
後座、掛花、濃茶を頂く
後座、薄茶を頂く
 
主菓子、山茶花
干菓子、紅葉・通い路
11月の教室では正午の茶事のお稽古をしました。八十八夜に摘んだお茶が夏の土用を越して熟成し、おいしくなるので、炉を開き、皆で楽しみました。平常(ふだん)のままの練習風景を掲載しました。詳しくはHPをご覧下さい。
しらはぎ会HP、リンクから入って見られます。
☆そばと鴨肉について

12月に入ると懐石でもそばを使ったりします。秋ソバが稔りを迎え、そば打ちが始まり、香り高いおいしい新そばが出来上がるからです。

ソバの主成分は炭水化物ですが、リジン、トリプトファン、スレオニンなどの必須アミノ酸を含み、たんぱく質の栄養価も高く、更にビタミンB1、B2、ニコチン酸、ムチンなども含まれています。ソバは種をまいてから75日で収穫され、荒れた土地でも育つことから、古くから栽培されてきました。母はソバの可愛い白い花が好きと、庭の片隅で育てていたのを思い出します。以前「西浦の田楽」を訪ねて水窪出身の同期生に案内して頂いた折、「この地方は耕地が乏しいので山を焼いて焼畑にしてソバを植えてね。戦前は鉱山もあり活気があったけれど、今は林業が主になってね。」などと、聞かされながら途中、彼の住いであった所に立寄りました。そこは塩の道、秋葉街道の西渡から明光寺へと塩や米が運ばれる八丁坂の登り口近くで、彼の勉強部屋が街道に面して残されているのにびっくりしました。

12月のお料理にソバを使うもう一つの理由に赤穂浪士の討入りのいわれがあるようです。12月14日は赤穂浪士47名が吉良屋敷へ討入りした日です。御存知の通り、この日のことは脚色されていろいろな物語となっていますが、その中から食に関する一部分のお話をお伝えします。どれも見聞きしたものばかりなので御容赦下さい。討入り前夜に亀田屋なのか、そば屋十兵衛なのか、縁起をかついで「手打ち」そばを食べたといわれています。この説が昭和に入ってから「そば屋集合説」になったようです。そばを食べた後には堀部弥兵衛宅にて酒宴が催されたそうです。その折でしょうか、あぶった鴨肉と葱を溶き卵に混ぜて味をつけ、炊きたてのご飯に混ぜて卵かけご飯にして、それを食べてから討入りに出発したというお話もあるようです。

今回はこんな訳で、そばや鴨肉を使ったお料理を作ってみようと思います。

 

蕎麥の始りはうどんより遅く、徳川時代甲州で試みたのが最初で、以来全国に流行して今日に至ったものであります。昔、甲州では米作が思ふようでなく、旅宿(やどや)などで米飯を供することも、携行することも困難であったため、蕎麥粉を代用し、これを煉って、謂(いわ)ゆる蕎麥がきを作り、これを食用としたのでありました。その後、蕎麥がきから蕎麥切りが工夫されるに及んでも上流はこれを下賤の食として口にすることを嫌ひました。蕎麥切りは蕎麥粉8分にうどん粉2分を混ぜたものでしたが、その後、蕎麥粉2分にうどん粉8分を混(こん)じた二八蕎麥といふものが出来、だんだん調理も混歩(しんぽ)して、今日のやうな、天麩羅蕎麥(てんぷらそば)、おかめ蕎麥、小田巻き等といふ、雑多な種物が案出されました。かやうにして今日では貴賤の別なく、最も一般的な食物の一つとなったのです。
(昭和6年、「家庭料理千種」より)

 

① そばがき

上等の少し粗い目の新そば粉で作ります。古い粉では香りがありません。
粉を分量だけ丼に入れたら熱湯を少しずつ注ぎながら、箸5~6本で急いでかき廻し、箸でちぎれるくらいの固さにします。かき廻す時、必ず右か左の一方向に急いでかき廻さないとまま子になります。 これを箸で適宜にちぎって醤油をちょっとつけて頂きます。

 

父の大好物で、新そば粉が手に入ると自分で作っていました。遠い日の記憶です。今回練ってみてとてもむずかしかったです。
私はこの50回目の「そば」を書くに当たって池町の粉屋さんにそばがき用のそば粉と団子用と饅頭用のそば粉を買いに行きました。
その時90歳ぐらいの御婦人が「主人がそばがきを食べたいというのですが」と言って、お店のおかみさんと相談して居り、一人分の粉を百円で買って帰りました。まだこの様な方がおられることと百円分の粉を袋詰めして売るおかみさんとに驚いてしまいました。

② 蕎麦ずし

そばは程よく茹でて長いまま揃えて笊に真直ぐに並べておく。
のり巻きずしを作る要領で焼きのりの上にそばを並べ芯に三つ葉と卵焼きをあしらって直径3~4cmの中太巻きにする。
小口から3cmに切る。
水打ちした笹の葉を敷いた上に涼しく盛り、紅生姜を添え、別に醤油を注いですすめる。

冷蔵庫に入れてつめたくして頂くと又格別で、何といっても夏のご馳走です。
蕎麦の煮込み

そばを少々太目に打ち、別に干鰯の煮出汁(だし)をたっぷり煮立て、初茸やしめじを入れて醤油で濃い目に味をつけ、葱の斜切(はすぎり)、里芋の輪切、人参と牛蒡の笹がきを煮込みます。

野菜が柔らかくなったら食べる分だけずつ蕎麦を入れ(多く入れると伸びます)、取り合わせのものと一緒に丼に盛り、熱い汁をかけて頂くのです。

これは神奈川縣地方の名物料理でして、冬になると何処の家でも御飯代りに頂くほどであります。
(昭和6年、「家庭料理千種」より)


煮干しの出汁を取って野菜を煮て生そばを入れると、汁にとろみがつきます。
御飯代わりと言うので、たっぷり盛ってみました。

ざるそば

沸騰したたっぷりのお湯に好みの蕎麦をバラバラと入れ、軽く箸で混ぜ、吹きこぼれそうになったら火加減を弱めて調整する。
生蕎麦ならば1~2分、乾蕎麦ならば8~12分、茹で過ぎないように2~3本取り上げ、固さを確かめる。
ゆで上がった蕎麦は笊に取り手早く水洗いする。
笊に盛る。
細切り海苔をかける。
そばちょこには辛味大根の絞り汁を入れる。
信州から持ち帰った香り高い味噌で食す。
薬味は葱、山葵など、勿論そばつゆで頂くのもよい


信州の千曲川を一望する高台に広大な芝生の庭を持つ蕎麦屋があります。東京からヘリコプターで食べに来るお客さんもあるそうです。 とても美味しいので、まねをしてみました。

⑤ ぢごく蕎麦

寒さに向うと生蕎麦を茹でながら食べるぢごく蕎麦が何とも良い。
食卓に鍋を置き、湯を沢山煮立てておき、その中へ生蕎麦を入れ、煮える一方からどんどん各自の箸で鍋からすぐそばつゆに受けて頂く。
一旦水に取ると、いくらか風味がぬけるのでこの様にすると本当の蕎麦の香りが食べられる。
寒中でも汗が出るほど温まる。
晒し葱、大根おろし、もみのり、七味唐辛子等の薬味を沢山添える。

鴨の治部煮   すだれ麩・ほうれん草・練り辛子
材料(6人分)
鴨胸肉 1枚(正味200g)
小麦粉    
だし

2/3C

醤油 大3
砂糖

大1

大2

練り辛子
少々
すだれ麩
1/2枚
(戻して100g)
だし

1C

小1/4
薄口醤油
小1
砂糖
大1/2
ほうれん草
150g
だし
1/2C
醤油
大1
みりん
小1


① 肉はそぎ切り、肉たたきで叩く。小麦粉をまぶし余分な粉は払う。
② フライパンにだしと調味料を煮立て肉を並べ入れ、火が通ったら直ちに取り出して練り辛子を添える。
③ すだれ麩は水に1~3時間つけて戻す。食べやすい大きさに6切れに切り、だしと調味料を加えて煮る。
④ ほうれん草は茹でて水に取り、3つ位に切り、水けを軽く絞る。だしと調味料を煮立てた中に入れ、さっと煮る。
⑤ 器に②③④を盛り、④の汁に②の汁を少し加えて注ぐ。

鴨の治部煮は石川県金沢市の代表的な郷土料理です。 金沢特産のすだれ麩やほうれん草などを取り合わせた汁気の多い煮物です。
鴨肉は皮や脂がおいしいので取ってしまってはいけません。 鴨肉はすべて合鴨ロースを使いました。

合鴨と野菜の炊き合わせ       八ッ頭の含め煮 梅人参 絹さや 千切り柚子

治部煮はと同じ。
八ッ頭は下茹でして温かい出汁に入れ、調味料を入れて含め煮にする。
人参は梅型にして煮る。
三種盛り合わせ、彩りに青煮した絹さやと千切り柚子をあしらう。

詳しくは四季の味をご覧下さい。写真も四季の味からです。
四季の味:喜田芳子著(株)東京読売サービス出版  平成9年2月15日初版
⑧ すっぽん仕立   鴨肉 葱 ほうれん草 生姜汁

合鴨ロース200gを12枚にそぎ切り、4カップの水に酒1.5カップ入れた鍋に入れて、肉に火が通ったら薄口醤油大さじ1と生姜の絞り汁を入れる。
椀に盛り、焼き葱とほうれん草を添えて盛り、汁を張る。


⑨ 鴨のつくね汁

鴨肉の切り落とし(治部煮に使った残り)をフードプロセッサーに入れ、塩一つまみ入れてミンチにする。
沸騰湯に塩少量を入れた中に丸めて落とし入れ、上に浮くアクと脂少々をすくい取り、醤油で味を調える。
椀につくね3個を盛り、結び三つ葉をあしらい、柚子を吸口にする。


⑩ つゆ蕎麦   茹で蕎麦 鴨つくね ほうれん草 葱 柚子

出汁に濃い目の吸味をつけ⑨で作った鴨のつくねとそばを入れ、一煮立ちしたら斜切の葱を入れ、熱々を椀に盛る。
ほうれん草と松葉柚子をあしらう。


鴨つくねの椀盛   茹で蕎麦 鴨つくね 扇面人参 白髪葱 ほうれん草 松葉柚子 青汁仕立

昆布と鰹節で取った一番だしに吸味をつけておく。
人参とほうれん草は茹でておく。
汁が煮立ったら蕎麦を入れ⑨で作った鴨のつくねを入れ、一煮立ちしたら味を調整して椀に盛り、人参、ほうれん草をあしらい、晒し葱を薬味に柚子を吸口にする。


*一番だし
鍋に5Cの水を入れ、10cm角の利尻昆布を入れて火にかけ、沸騰直前に昆布が浮いてくるので取り出す(90度まで)。
その中へ鰹節15gを入れて90度から100度まで1分間煮出して2~3分置いてから静かに鍋をかたむけて上澄みをとる。
吸い味は4Cの一番だしに塩小さじ1と薄口醤油小さじ1が良い。
体液の塩分濃度約0.8%につけると体になじみが良い。
⑫ 椀盛   糸より鯛の一塩そば巻き 浅草のり 青葱
材料(6人分)
糸より鯛 1匹

   
そば

1/2束

竹の皮
少々
焼のり
1枚
青葱
2本
だし

4C

小1
薄口醤油
小1
濃口醤油
小1
大3


① 糸より鯛は三枚におろして小骨をぬき、観音開きにして軽く塩をふって、暫く常温に置き、水けを取って笊に並べ冷蔵庫に2時間おく。
② そばは三つに分けて、端を輪ゴムでくくり、茹でて長いまま揃えて笊に真直ぐに並べておく。
③ 糸より鯛の横幅にあわせてそばを切り、ぐっと固めて糸より鯛の上に置き、そばを芯にして巻き込む。
④ その上から水でぬらした経木(きょうぎ、竹の皮がなかったので)で巻き、更にすだれで巻いて布巾で縛る。
⑤ 強火で10分蒸す。
⑥ のりは短冊に切る。葱は小口切りにする。
⑦ ④を3cmの厚さに切る。切り口を見せて椀の中央に据え、そっと経木を取り除き清汁を張る。
⑧ そば巻きの上に海苔を半がけにして上に葱をおく。

経木では美しい皮がはげてしまう。
すだれの上に薄焼卵を敷いて片栗粉をふり、③をのせて巻き、蒸したらよかったと思う。上出来ではありませんが、もう一度の気力がありません。

⑬ 蕎麦団子

粉屋さんで「そばすいとん用粉でいかがでしょうか」と、言われたので使ってみました。
蕎麦粉と小麦粉と加工澱粉がブレンドされたものです。
粉の半量の水を加え、梅干し大に丸めて茹でてみました。
甘辛の醤油たれやきな粉を添えてみました。

⑭ 蕎麦饅頭

150gのそばすいとん用粉に半量程度の水を徐々に加えながら、始め箸でかき混ぜてからこね、さらに少しずつ水を加えて、耳たぶ位の柔らかさにして6つに分けると、1つが50g位となる。
中のあんこですが、茶事の味噌汁の実の大納言小豆が煮すぎて腹割れしたので、あんこになっていました。
そこでこの皮に包んで饅頭にして蒸してみました。

おいしいのですが、少し固いので白玉粉を少量加えれば良いと思います。
お店のおかみさんが「どんなか聞かせて」と、言っていましたが、すいとんにすればとてもよいと思います。
 

長い間、出来損ないの料理写真やつたない文章を御覧下さいまして、ありがとうございました。
 
実家では家族揃った夕餉(ゆうげ)の食卓で、父が手酌でゆっくりお酒を飲みながら、子供達一人ひとりに一日の出来事を報告させるのでした。遠足の後の国語の時間は作文となります。父が夜中に下書きをしてくれましたので、私はそれを写すだけで、小学校から中学校まで自分で作文をしたことがありません。今回やっと小学生の作文になったのかなと思っています。
大変失礼を致しました。
 
50回となりましたので一旦ここで区切りと致しまして、「気力が残っておりましたら」又、と言うことにさせて頂きたいと思っております。

同窓の皆様、お健やかに新年をお迎えくださいませ。