土用の頃、遠州灘では土用波と呼ぶ大きな波が立ちます。台風や大潮の影響もあるのですが、寄せては返す波の波長が重なり、ビルの高さに感じる程の大波が海辺で遊んでいる子ども達を一気に巻き込むのでした。今は遊泳禁止となりましたが、海の子らは大人になる迄にこんな経験を何度もして海を知りました。それでも夏休みの日課は海や浜名湖へ泳ぎに行くことでした。
夏休みになるとこの浜名湖へ涼を求めて兄や私の友人達が訪れました。私の家族が接待好きのこともありましたが、本当は鰻が目当てだったのかもしれません。
天然の鰻は川や浜名湖でもとれますが、一般的なものは浜名湖周辺の池で養殖されています。父は
「喜田君が来るから鰻を買いに行ってくる。」と言って数軒ある鰻の養殖場を選定していました。誰の池が良いかの判別です。池替えをしっかりしているか、餌は程良いか、運動させているか(鰻の数と池の広さ)、立場*1(たてば)の水は、等です。戦前は北海道のホッケを餌にして2・3年かけて育てていましたが、今は稚魚(シラスウナギ*2)に合成飼料を与え、ハウスの中の温水プールで育てているので半年で成魚となります。池から上げた鰻に立場でシャワーを浴びせ、汚れを吐かせてから出荷します。
昔、「うなぎと梅干し」は食い合わせといって一緒に食べてはいけないと言われていました。ある日テレビ番組で大学生10人程に実験させていました。「何ともない」と放映されていましたが、私の体験ではみかんと一緒に食べて腹痛を起こしたこともしばしばです。又料理の師匠のお父様がこれで亡くなられたとも聞いています。
鰻は脂が強く消化するのに8時間かかると言われていますので、体が弱っている時は気を付けるにこしたことはありません。
*1 |
立場 |
|
|
鰻の沢山入ったカゴを置いて、高い所から水を落として泥を吐かせる場所 |
|
|
|
*2 |
シラスウナギ |
|
|
河口近くの海で獲れますが近年漁獲量が減ってしまい、行く行くは鰻が食べられなくなるのではと懸念されています。長年謎とされていたシラスウナギの卵が最近(平成23年)マリアナ諸島の水深200mの青い青い海で生まれ、一日半でふ化して2000kmの旅をして日本に到達することが解かりました。又、近年(平成22年4月から)東京大学で卵からふ化して養殖を始めています。世界で初めての試みだそうです。
私達は卵を生む親鰻を守るために河川の環境の悪化を防ぐ努力をしなければなりません。世界中で日本が一番鰻を食べる(年間3億6000万匹)民族だからです。 |
|