昔の宿場町であった海辺の実家では、暫々、蛤のお吸物が食卓に出され、普段は昭和11年の「うしほ」のように蛤は3個入っていました。来客の折には、お刺身、茶碗蒸し、フライの前にお吸物が出されます。冬はかき、春は蛤で、蛤の潮汁の中には「よりうど」が浮いていました。この潮汁を作る度に母は「結婚式の宴席では蛤のお吸物が必ず出されるの。貝を2個入れて、1個目の貝は上向き、2個目の貝は下向きに重ねて入れるのよ」と、話していたのを思い出します。娘の頃でしたが、この意味は何となく解っていたようです。
蛤の潮汁(うしおじる)については昨年の上巳の節句(第15回)で作り方や写真を掲載してありますので御覧下さい。蛤は何故ひな祭りに使うのかなども詳しく掲載してあります。ただこの婚禮の蛤については母からの伝承だとばかり思っていましたが、吉宗からとは、私も初めて知りました。
前回、お茶のお話を載せましたが、「結婚話(縁談)の来客にはお茶は出さないの。茶化すと言って・・・、桜湯を出すのよ」と、母は姉妹のそんな折には塩漬けの桜花に湯を注いでお出ししていました。
今回は新たに蛤2個と塩漬けの桜花を使ってお祝いの「うしほ」を作ってみました。