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卵豆腐 |
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カスタードプリン |
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だし巻き卵 |
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シュークリーム |
戦前の料理本の中にすでにエネルギーや消化時間・栄養価などが表記されているのに驚いています。母が朝食に半熟卵やオムレツ・卵かけ御飯、お弁当には卵焼き、遠足には茹で卵を持たせてくれたのが、これを見て納得しました。遠足などで長時間体力を持続させるには、消化時間の長い堅ゆで卵が良いのですね。遠足の帰りに「イオウ」の臭いのするゲップが出たりしましたが、リンが多く含まれているからでしょうか。卵は水から18分、それ以上茹でると白身と黄身の間がグレーになります。
ところで日本人は鶏卵をいつ頃から食べていたのでしょうか。一般的には江戸時代からといわれていますが、それ以前にも食べていたようです。日本画の田舎の風景にはしばしば鶏の絵が描かれています。幼い頃、母の里で庭におんどり(雄鳥)とめんどり(雌鳥)の番(つが)いが籠をかぶせられて飼われていました。そんな場面は現在も時代劇の映画やテレビで見ることができます。往時の鶏は刻(とき)を告げるための家畜で食用として飼われていたのではないようです。その後、野鳥などが減少するにつれて鶏肉も食用となり鶏卵も食べるようになりました。
戦後の食糧難では各家庭で鶏小屋を作り5~10羽ぐらい飼って卵を産ませていました。母はめんどりに卵を抱かせ、ひよこが産まれると卵黄の裏ごしを食べさせて大きくしていました。鶏のエサは大根葉を刻んでフスマと混ぜて作ります。卵の殻が柔らかくなるとカキ殻をくだいてエサに混ぜて与えます。母が「やっと卵を産むようになった」と、喜んでいた矢先のある夜、野犬や野良猫におそわれて「コケッコッコー、コケッコッコー」と、大さわぎになりました。暑い盛りには「とや=鳥屋」といって卵を産まない時期もあります。そんな時、少しの卵は体の弱い子が食べることになっていました。私が「ちゃぼ」の番いを庭で放し飼いにしておりましたが、近くのアパートから「朝早くから鶏の鳴き声がやかましい」と、注意され断念しました。無風流なことです。
卵は滋養に富み、消化も良いので戦前前後を通じて病人のお見舞に持って行くことになっていました。近年は大量生産で安定して供給され保存もよく、手頃な価格なので重宝に用いられています。
卵料理は無数にあります。目玉焼き、卵豆腐、茶碗蒸し、だし巻き卵、プリン、シュークリームなど、変幻自在なのでむずかしい食材ともいえるものです。今回は代表的な卵料理の卵とだしの割合を表記します。
卵豆腐 |
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1〈卵〉:1〈だし〉 |
茶碗蒸し |
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1〈卵〉:4〈だし〉 |
だし巻き卵 |
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1〈卵〉:1/4〈だし〉 |
カスタード・プディング |
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1〈卵〉:2〈牛乳〉 |
カスタード・クリーム |
… |
2〈卵〉:1〈牛乳〉 |
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