① 神棚を清めて榊をあげ注連縄(しめなわ)を張り、鏡餅を供えます。
② 仏壇を清掃して花を入れかえ鏡餅を供えます。
③ 門前に門松と注連飾りをします。一夜飾りはよくないと言われていますので28日迄に飾ります。
④ 鏡餅を三方にのせて床の間に飾ります。三方に奉書紙もしくは半紙を四方にたらして敷き、重ね餅をのせ、上に紙垂(しで)と輪じめ、橙(だいだい)を飾ります。裏白は心の裏まで潔白、ゆずり葉は栄えた家業を子孫に譲る、昆布は喜ぶ、重ね餅は豊作と夫婦円満、紙垂は清浄、輪じめは依代(よりしろ)、橙は代々の繁栄を意味します。
⑤ 床の間にはお正月にふさわしい掛け軸をかけ、生花と屠蘇(とそ)の道具を置きます。
⑥ お雑煮は室町時代から始まったようですが、安土・桃山時代の辞書にはザウニを「正月に出される餅と野菜で作った一種の煮物」と定義しています。江戸時代には将軍から貧しい人々まで正月に雑煮で祝うようになりました。雑煮の材料は、「里芋、大根、青菜、いりこ、串鮑、餅四角に切り二つ重ね、上に削り鰹、みそ仕立又はすまし仕立」などと記されています。いりこと串鮑を鶏肉とかまぼこにすれば現在もほとんど変っていません。関東は角餅で清汁仕立、関西は丸餅で味噌仕立。又、地方や家風によって特色があります。お雑煮については12月31日(次回掲載)にも掲載します。

伝統のおせち(私の三日がかりの力作です)
⑦ おせち料理
いわれ、重詰め、詰め方については前年度(H.22年)の第11回「伝統のおせち」に掲載しましたが、今回も焼き物のお料理の後の小話で詳しく書いてみました。

SBSメディアの藤田敦子さん(33回)の取材に応じ、「お雑煮」について、詳しく「びぶれ」に掲載して頂きましたので、御覧下さい。12月22日発行です。
祝い肴三種(一の重)
 
 

黒豆

第11回「伝統のおせち」に掲載しましたので、御覧下さい。
黒豆は北海道産の新豆を豆専門店増井商店(肴町)にて求めています。
古くからのいわれは「豆豆しく=元気で」という意味で、畑の蛋白質。屠蘇の祝い肴の三種の内の一品です。
 
田作り

こちらも「伝統のおせち」に掲載してあります。
五万米(ごまめ)とも呼ばれ、五穀豊穣の願いを込めて必ず作られる祝肴の一品です。カタクチイワシなのでカルシウムが含まれています。

 
たたき牛蒡
数の子の代わりにもなります。牛蒡は室町時代から栽培され強い薬効があることから古より重用されています。繊維質も多くビフィズス菌の食べ物となります。「たたく」のはお年寄りにも食べよいこと、味がしみやすいからです。祝肴三種の一品です。
 
  注:材料6人~12人分表示はいずれも4人家族で三が日分です。
材料(6人~12人分)
  牛蒡
・・・
1本
 
  白胡麻
・・・
大4
 
砂糖
・・・
大1
 
・・・
大1と1/2
  醤油
・・・
小1

 

① 牛蒡は皮をこそげ取って鍋に入る長さに切り、太い所は割り箸程度に切って、酢水に漬けてアクを抜き、水から入れて柔らかくゆでる。
② ザルに上げ、水気をきって形をこわさない程度にすりこ木で叩く。5~6cm長さに切る。
③ 白胡麻を程よくいり、すり鉢に入れて少し粗めにすり、調味料を入れて、すり混ぜる。②の牛蒡の熱い内に加えからめる。(形がくずれないように注意)

 

 
*年始客に屠蘇と祝肴三種で御挨拶します。数の子、たたき牛蒡は全国的に使われますが、どちらかというと、関東:黒豆・田作り・数の子、関西:黒豆・田作り・叩き牛蒡。
 
祝い肴三種(一の重)
 
 
金団栗絞り

金団(きんとん)は金の塊りで、財宝が豊かになるように。 炭水化物・資質・ビタミン・繊維。

材料(6人~12人分)
  さつま芋
・・・
500g
  白味噌 
・・・
大1
  砂糖
・・・
1/2C
  抹茶
・・・
小2
  栗甘露煮
・・・
12個
  くちなしの実
・・・
1~2個
  焼きみょうばん
・・・
適量

 

① 芋は1,5cm厚さの輪切りにして皮をむき、みょうばん水に浸す。
② 水洗いしてヒタヒタよりやや少なめの水を入れ、くちなしの実をガーゼに包んで入れて柔らかくゆでる。
③ くちなしの実は取り出し、砂糖と味噌を入れ程よく練り上げる。
④ 1/3量に抹茶の湯溶きを入れて混ぜ、黄と緑の芋団子12個ずつに丸める。
⑤ ぬれ布巾に黄の芋団子を置き、平たくし、その上に緑の団子を重ねて平たくし、栗を真中に置いて茶巾絞りにする。

 
カニ寄せ卵

おせちの卵料理は沢山あります。錦卵、だて巻き卵、吹き寄せ卵などいずれも「黄金色」で福を吹き寄せるように。動物性蛋白質。

材料(6人~12人分)
 
・・・
7個
  塩 
・・・
小1
  砂糖
・・・
大3
  カニ身
・・・
100g
  グリーンピース
・・・
大3

 

① 卵に砂糖、塩を入れてよく混ぜ、テフロン鍋で柔らかいいり卵を作り、カニ身をほぐして入れ、グリーンピースも入れて混ぜ、蒸し枠に入れて押さえ8分蒸す。
② 冷めてから切る。

 
曙羹(あけぼのかん)

みかんが出回る時季なので絞って寒天で固めます。寒天を使った料理はお祝いによく使われます。日持ちさせるには砂糖を多めに使い冷蔵庫に入れておき、その都度、重箱に入れて下さい。白い梅型は牛乳寒で作ってあります。

材料(6人~12人分)
  みかん汁
・・・
1C
  粉寒天 
・・・
1袋
  砂糖
・・・
1C弱

 

① みかんの皮をむき、半分の輪切りにし、布巾に包んで絞り1カップ用意する。
② 鍋に水1カップと粉寒天を入れて3分位弱火で煮溶かし、砂糖を入れ溶けたら火を止めて①を加え流し缶に流し、冷やし固める。

 
焼き物三品(二の重)
 
 
車海老の養老煮

海老は火を通すと曲がるので、腰が曲がる迄長生きするようにと縁起をかつぎます。

材料(4人×3日)
  車海老
・・・
12匹
 
・・・
1/3C
  みりん
・・・
1/3C
  砂糖
・・・
大1
  薄口醤油
・・・
小1
 
・・・
小1/3

 

① 車海老は水で洗い背わたを取る。
② 鍋にカッコ内の調味料を合わせて煮立て、車海老を入れる。
③ 蓋をして3分間火を通し、全体が赤く発色してきたら箸で形を整える。
④ バットに広げて冷まし、ひげの先と尾を切り整える。
 
鰆の西京漬け焼き

鰆は淡白な味なので塩焼きはお勧めではありません。幽庵漬けにするか、今回のように西京味噌に漬けてから焼くのが良いでしょう。

材料(4人×3日)
  さわら
・・・
12切
 
西京味噌
・・・
600g
 
・・・
大3
  砂糖
・・・
大3
  みりん
・・・
大3
  薄口醤油
・・・
大1

 

① 味噌に調味料を入れてよく混ぜておく。
② 魚に軽く塩をふり30分常温におき、小骨を抜いて水気をふく。
③ 魚の切り身が並ぶ程度のバットに半量の味噌を入れて平らにし、洗って絞ったガーゼをのせて②の魚を並べ、もう1枚のガーゼをのせて残った味噌を平らにのせラップで覆い、1~2日冷蔵庫に入れておく。
④ 魚を取り出して焼く。魚の漬け具合によっては、みりんと醤油少々合わせたものをハケでぬってもよい。

 
豚肉の香り焼き

家族、特に孫達の好きなおせちの一品です。とても簡単ですから作ってみてください。

材料(4人×3日)
  豚ロース肉
・・・
500g
 
醤油 
・・・
大4
 
・・・
大3
  みりん
・・・
大3
  砂糖
・・・
大1
  ケチャップ
・・・
大2
  玉葱すりおろし
・・・
大1
  リンゴすりおろし
・・・
1/4個
  梅干し(大)
・・・
2個
 
・・・
小1/3

 

① 調味料を合わせておく。
② 肉は厚さ2cmのものを7~8cmの長さの棒状に切り、①に一晩漬ける。
③ 200度の天火で8分焼く。
④ 天板に残った焼き汁は、煮つめて③をまぶす。
⑤ 冷えてから重箱に盛る。
 
〜小話〜

蒔絵や家紋入りの重箱に詰められたおせち料理。鮮やかな彩りが美しい、日本の伝統的な食文化の象徴ともいえるものです。
おせち料理は「お節供」からきた言葉で、本来、正月のほか端午の節句などの「節」に神様に「供」える料理全般を意味するものでしたが、近世になってから正月のハレの料理を指すようになり、同時にまた、正月三が日に主婦を家事から解放するための「重詰め料理」を言うようになりました。
近頃では出来合いのおせちで済ませる主婦が増え、本格的なおせちの作り方を知るひとは減る一方のようですが、おせちは栄養のバランスのとれた理想的な料理ですから、若い主婦の方々にもぜひこの伝統料理の技法を身につけて頂きたいと思っています。
お重は、現在では三の重までが多いようですが、正式には五つ、五の重まで。四は死に通じるというので与の字をあて与の重といいます。一の重には祝肴と口取り、二の重に鯛の黄金焼きなどの焼き物、三の重にはコブ巻き(遠州ではこれに焼きハゼを使います)などの煮物、与の重には魚や野菜の酢の物を詰めます。五の重は控え重といって本来は奥に引っ込めておくものですが、今回は一の重の祝肴の味と口取りの味が混じるので口取りのほうを五の重に詰めてみました。

奥村土牛の掛け軸

今回の写真の「伝統のおせち」は私が三日がかりの力作です。

お料理だけでなく床の間の飾りつけにも気を配りました。
いけ花は母直伝の竹真(たけじん)の松竹梅を御玄猪(おげんちょ)に生けました。竹は庭屋さんにお願いして七節の孟宗竹(もうそうだけ)を切って来て頂きました。副(そえ)の松は門かぶりの一番大切な枝を切り落としたので、庭屋さんに叱られてしまいました。体(たい)は庭の梅の小枝を使ってあります。
床の間の掛け軸は奥村土牛作の扇面にくわいが描かれたものです。
床飾りの三方の鏡餅は特注しました。裏白、ゆずり葉、橙、輪じめ、伊勢海老は予約。奉書紙、昆布、紙垂の用意など12月中旬に読売新聞社からの依頼を受けて支度をしたのですが、まだお正月用のお飾りも売られていなかったので苦心をしました。

実家では毎年お正月にはこのお生花(しょうか)が飾られていて、竹の上から「やかん」で水を注ぐのが私の番でした。おせち料理をお重箱に詰め終った頃には除夜の鐘が鳴っているのに、まだ母は私に生け花の手伝いをさせるのです。井桁(いげた)を組んで竹真をたて、やっと出来上がったと思ったとたんにひっくり返ってやり直しです。
母との思い出の一こまです。